商店街がつなぐもの『Go To 100円商店街』
協同組合北本町昭和会、協同組合新庄中央通り商店会

山形県新庄市。古くは街道の交差する城下町として、近代には鉄道の集積地として栄えた山形県最上地方の中心都市だ。新庄駅を起点に旧城下に繋がる商店街は全長2kmにわたり、かつて新庄節にも唄われた繁栄を偲ばせるが、訪れる人は少ない。人口は周辺町村をあわせても8万人弱。人口減少、高齢化、商店街の空洞化の波にさらされている。
新庄で生まれた地域振興策に「100円商店街」がある。
商店街全てを巨大な100円ショップに見立て各店で店頭に100円商品を用意する。買い物しなければ入りづらいと思われがちな個人商店の敷居を下げて、各店内に新規顧客を誘導し、さらにまち全体を回遊させるこのイベントは、2004年に新庄市の南本町商店街で始まり、全国に広がった。

背景・課題コロナ禍の100円商店街とは
100円商店街は、隣接する4つの商店街の合同で定期的に催され、すっかり定着していた。毎回様々な趣向を凝らしたイベントも行われ、おじいちゃんおばあちゃんが孫を連れて集まってくる昔の商店街のような姿がそこかしこで見られた。
しかしそこへ突然の、コロナ禍であった。大きなイベントを開催したくさん集客する。そんな従来の考えが通用しなくなった状況で、それでも新たな道を歩み始めた新庄の商店街。南本町商店街理事長、深田裕一さんに話を伺った。
「平準化。と表現していますが、一度にたくさんではなく数回に分けてより満遍なく集客していく。コロナ対策と両立させながら安心して来街してもらえるような形を模索しました」100円商店街の集客を平準化する。それがこのまちの新たな試みだ。これまでの100円商店街では、各参加店が知恵を絞った数多くの100円商品を集積することで一度にたくさんの集客を目指してきた。しかし今回は三密を回避せねばならない状況下で、できるだけ人を集めたい。その難しい舵取りにGo To 商店街事業を大いに活用した。

商店街への集客を「満遍なく分散させる」ためのアイテム「100円チケット」。
取組内容週末開催と「100円チケット」で
集客を分散
これまで通年で隔月1日開催していた100円商店街を、ひと月に集約し毎週末の開催に変更した。同時開催の集客イベントは各週に振り分け、一日の集客のためではなく、むしろ満遍なく分散させるためのイベントとして再構築。2kmにわたる商店街の各所に計8ヶ所検温所を設け、徹底して三密を回避した。 そしてイベント当日以外でも使用できる「100円チケット」を導入。「100円チケット」の使用期限は各店舗に委ね自由度を高くした。「100円チケット」がイベント開催日だけではなく平日でも使用できることで、今までの層とは違った顧客の取り込みを目指した。
深田さんは言う。「今までやってきたことをそのまま繰り返すのであれば商店主たちにもそんなに説明は必要ないですが、また大きく形を変えてのことですからね。それぞれのお店のやり方もできてきた中でまたやり方を変えなきゃいけない。Go To 商店街事業には夏ごろからいち早く手を挙げようと考えていましたが、その分やはり事業の構築や実施に向けたすり合わせには時間をかけました」 「100円商店街発祥の地」である新庄市が、自ら形を変えていく変革。2020年10月から募集が開始されたGo To 商店街事業において東北で最初に採択された3件のうちの一つ。自分たちの力でアップデートしていくんだという覚悟のもとの、新たな挑戦だった。


発祥の地自ら変革する 新たな100円商店街
新たな100円商店街は、2020年11月に毎週末合計5回の開催へと変更した。にもかかわらず、隔月で1日間開催していた時と同等の集客を達成した。3密を回避しながら街には久しぶりに客足が戻り、家族連れや若年層の姿もみられた。また、100円チケットの導入によりイベント当日以外の平日の集客にもつながり、一度にたくさんではなく数回に分けてより満遍なく集客していくという当初の計画を達成できた。
「結局ね、商店主ってものはみんな、お客さんの相手をするのがとってもうれしいことなんですよ」
深田さんはそう言って目を細める。
「もちろん多かれ少なかれみんなコロナ禍では苦労しているんです。今までのやり方も通用しないし元気もなくなっていく中で、それでも新しいやり方で始めたわけですから、戸惑いの声もあったのは当然です。でも何とか対策をしながらイベントをやって、それで店にお客さんが実際に来てくれるとね、やっぱりうれしいんですよ商売人ってものは。そうすれば次はこうしようかななんて工夫もそれぞれの店で生まれてくるし、一度やったことによって今後に生かせるやり方も確立してくるでしょう。改善点も含め、手ごたえを口にしてくれる店主の声も聞こえてきています」

将来の構想これまでもこれからも
まちの賑わいを
ご自身も老舗菓子店を営む深田さんは、このまちの人間として育ち家庭を営んできた地域人でもある。一緒にお店を営む奥様が言葉を添えてくれた。
「私たちが小さい頃は、親に手を引かれていろいろなお店に行きました。私自身そんな思い出がたくさん重なってまちへの愛着があるんです。100円商店街をきっかけに、小さな子がお店に来てくれる。その子にとっての思い出のお店になれて、うれしいんですよ」
このまちで生きていく子供たちの幸せな記憶の一部になりたい、そしてそんな記憶の積み重ねが愛着となってまちの未来に繋がっていく。
「コロナ禍の推移もありますから、今後100円商店街がどんな形になっていくかはまだわかりません。しかし今回、当初の計画通りに、毎週末開催により集客の平準化が達成でき、100円チケットでイベント当日以外の集客につながる仕組みを構築できたことは先にも繋がっていくはずです」
深田さんは確かな手ごたえを口にしてくれた。
- 一度にたくさんではなく数回に分けてより満遍なく集客していくことを目標に、隔月で1日開催していた100円商店街を、11月毎週末開催(合計5回)に変更することで集客を分散。以前と同等の集客を達成し、イベントを平準化した。
- 同時開催の集客イベントも各週に振り分けた。2kmにわたる商店街の各所に計8ヶ所検温所を設け、徹底して三密を回避した。
- イベント当日以外でも使用できる「100円チケット」を導入するなど、使用期限を各店舗に委ね、自由度を高くした。
- 「100円チケット」を平日でも使用できるようにし、今までの客層とは違った顧客の取り込みに繋がった。
事業者名 | 協同組合南本町商店街 |
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所在地 | 山形県新庄市本町 |
商店街の類型 | 地域型商店街 |
組合員数 | 31名 |
主な業種構成 | 菓子、お茶、カメラ、精肉、金物、婦人服、不動産、旅館、ジムなど |
電話 | 0233-23-0407 |
URL | https://www.facebook.com/minamihonchou/ |
事業者名 | 協同組合新庄駅前通り商店会 |
所在地 | 山形県新庄市沖の町 |
商店街の類型 | 地域型商店街 |
組合員数 | 85名 |
主な業種構成 | 靴、飲食店、ホテル、貴金属、お茶、婦人服、文具、たばこ、カメラ、画材など |
事業者名 | 協同組合北本町昭和会 |
所在地 | 山形県新庄市本町 |
商店街の類型 | 地域型商店街 |
組合員数 | 28名 |
主な業種構成 | 飲食店、学生服、酒、婦人服、文具、理美容、化粧品など |
事業者名 | 協同組合新庄中央通り商店会 |
所在地 | 山形県新庄市小田島町 |
商店街の類型 | 地域型商店街 |
組合員数 | 33名 |
主な業種構成 | 酒、スポーツ用品、食品加工、精肉、電気、総菜、飲食店、生花、パンなど |
新庄市 | 人口:34,526人 世帯数:14,017世帯 出典:住民基本台帳(令和3年4月末日) |