日本初の「SDGs商店街」を宣言
「まちゼミ」動画配信とGoogleマイビジネスでさらなる飛躍を

【福岡県北九州市小倉北区】
得するまちのゼミナール(うおゼミ)&
Googleマイビジネス促進事業
事業実施主体:株式会社タウンマネジメント魚町
「株式会社タウンマネジメント魚町」のメンバー。左から二人目が副社長の梯輝元さん
福岡県北九州市小倉北区の魚町商店街(通称:魚町銀天街)は、2018年に日本で初めて「SDGs商店街」となることを宣言した商店街である。さらに翌年、外務省による「第3回ジャパンSDGsアワード」で最優秀賞にあたる内閣総理大臣賞を受賞した。

また、「まちゼミ」の活動やオンラインで商店街の魅力を発信し、地域以外にもファンを増やしつつある。発信型商店街として、その存在感をますます発揮している。

商店街に司法書士事務所を構える一方で、商店街の出資によって設立されたまちづくり会社「タウンマネジメント魚町」の運営に携わる梯輝元(かけはし てるもと)さんに取り組みについてお話を伺った。

背景・課題人通りを取り戻すための空き店舗有効活用

北九州市は、政令指定都市のなかでも人口減少と高齢化が著しく、中心市街地の衰退や空洞化が深刻な問題となりつつある。北九州の陸の玄関口である小倉駅の周辺もかつての高度経済成長期における華々しい活気が徐々に失われ、2008年のリーマンショック後はその傾向がもっとも顕著で、駅前の大手百貨店さえ姿を消した。

「当時の駅周辺の通行量は、1日1万人程度で過去最低。駅近くのこの商店街で生まれ育ち、ピークの昭和40年代の活況を子供ながらに目にしていた私には、信じられないような光景でした」と、梯さんは語る。

そこで、商店街は行政や地域住民と連携して、空き店舗や空きビルをリノベーションし、チャレンジショップやスモールオフィスに転用し、地域に起業家や事業者を入居させて新しい産業や賑わいを興す活動を開始。梯さんは自ら所有するビルのテナントが撤退したのを機に、リノベーションによるまちの再生に取り組むようになった。

現在、テナントビルには、まちのリノベーションを手がける企業のオフィスもある。また、IT系サービス開発企業も入居しており、こちらは魚町商店街のオンライン情報発信に関わっている。空きのできたスペースに商店街振興に有効なスキルをもつ集団を誘致することで、活性化をパワーアップしようというねらいだ。

左:「うおゼミ」に参加する店舗には告知が貼られている
右:地元の学生を対象に行われたエコ工作の指導風景

取組内容「うおゼミ」で商店街の魅力を広く発信

商店街のまちづくりにおいては、その魅力を広く発信していく活動がカギになる。

愛知県岡崎市による「まちゼミ」※の取り組みを知った魚町商店街は、この取り組みは重要施策になると捉えて、Go To 商店街事業の採択で得た支援金約300万円のうち約100万円を「まちゼミ」活動の予算に充てた。福岡県内の数か所の商店街とともに情報交換や勉強会を行った後、魚町商店街の店主が自ら講座を企画し、講師となって各店舗ならではの専門知識やプロのコツを無料で教える少人数制のゼミを開くに到った。

以来、魚町商店街の「まちゼミ」は8年間続いている。なかには、小倉発祥の「焼きうどん」のおいしい作り方講座といった地域特有の企画も。また、ゼミ講座内容の動画配信も行って、地域以外の幅広い層に知ってもらう取り組みにも注力。梯さん自身も、商店街および周辺の隠れたスポットを紹介する「街歩きツアー」などの動画を配信中だ。

「和楽器店が三味線を分解する様子を収録した動画を見た方が、和楽器に興味を抱いてお店を訪ねてくださった、というケースも。『まちゼミ』の活動には、元から関心のあった方や交流のあったお客様との結びつきを強化すると同時に、潜在的な興味を抱いている若者層など、新たな顧客層の開拓にも効果があることを知りました」と梯さん。 さらに、動画配信したコンテンツは「アーカイブ」となり、商店街にとって魅力発信のための「長期的に有効なツール」であると、梯さんたちは捉えているようだ。

※「まちゼミ」は2003年に愛知県岡崎市で始まった取り組み。商店街の店主が商売に関する専門知識やコツを無料で提供し、店やまちのファンづくりを通じて商店街活性化を図るのを目的としている。ちなみに、魚町商店街では「まちゼミ」活動を独自に「うおゼミ」と名付けている。

魚町商店街振興組合のYouTubeチャンネルではまちゼミやSDGsについて配信している
上:おうちでまちゼミ!『魚町銀天街 街歩きツアー~アーケード編~』(youtubeを開く) 下:SDGs×商店街!? 魚町銀天街 SDGs PR動画「学びの先に」(youtubeを開く
ざっくばらんな意見交換のなかからアイデアが生まれることが多い

コロナ禍で再確認したオンライン発信の有効性

新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ事態は、あらゆる商店街と同様に、魚町商店街の人通りにも影響を及ぼした。人口減少と高齢化が落とす影にコロナ禍がさらなる脅威をもたらす時、商店街の人々は大きな気づきを得ることとなった。それは、情報のオンライン発信の有効性と重要性である。直接ふれあえないのであれば、画面越しでもいいから知ってもらい、魅力に気づいてもらえばいい。
そして、いつか再び足を運んでもらうモチベーションにしてもらえばいい。「まちゼミ」の動画配信サービスを一歩推し進める形で、2021年6月からはオンライン会議サービスを利用した受講者参加型の双方向講座を一部で開始する予定で、準備を進めているという。

加えて、コロナ禍の2020年末に始めた取り組みが、「Googleマイビジネス」を活用した商店街情報の発信である。このサービスを用いて、商店街のセールやイベント、個別店舗の情報を公開。顧客や情報を求める人は、Google検索やGoogleマップから入手できる仕組みだ。魚町商店街では、「タウンマネジメント魚町」経由で季節や状況に応じて打ち出したい情報を次々にアップデートしている。

商品をネット上で購入できるシステムも構築しており、オンラインによる情報発信は、リノベーションによるまちづくりで新しく商店街の仲間に加わったIT系サービス開発企業が担当している。「Googleマイビジネス」活用によるオンライン情報発信に際しては、Go To 商店街事業の支援金のうち約200万円を用いた。

「「Googleマイビジネス」は今や、企業や商店などの個別ホームページと肩を並べるほどの情報入手手段に成長したと聞きます。例えば、新規出店を検討している他地域の企業がストリートビューを見て魚町商店街への進出を決める、といった展開も考えられますので、集客力アップ以外の効果も期待できます」と、梯さんは語る。

「Googleマイビジネス」を活用し、商店街全体のイベントやお知らせ、各店舗の情報を効果的に発信している
季節イベントの様子。左:七夕まつり、右:クリスマスセール

将来の構想「SDGs商店街」の先駆けとして、新たな場の創出を目指す

まちの魅力を発信する魚町商店街の近年における積極的な取り組みを語るうえで欠かせないのが、「SDGs商店街」としての活動だ。2018年4月に北九州市がOECD(経済協力開発機構)によりアジア初の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に認定されたのをきっかけに、日本で初めて「SDGs商店街」となることを決意した。

地域行政の先進的な取り組みに呼応した活動は、全国へ向けた話題づくりにつながる。「SDGs商店街」宣言の後に商店街各店舗の取り組みや関係者の談話をまとめた動画を発表し、これが評価されて「第3回ジャパンSDGsアワード」を受賞。魚町商店街は広く注目を集めた。

「商店街の果たすべき役割は、物を売り買いする場だけではなくなっているといえるでしょう。地域コミュニティ再生と活性化の原動力として機能していけたら、と考えています」と梯さん。

コロナ禍終息の暁には、「SDGs商店街」視察ツアーや、「SDGs」を学生に教える社会科教育の一環としての修学旅行の受け入れなども視野に入れているそうだ。「SDGs商店街」の先駆者としての矜恃を胸に、商店街の可能性を探る彼らの試みは続いていく。

左:2019年「第3回ジャパンSDGsアワード」で最高賞を受賞。右:まもなく創業100年の呉服店「ゑり福」。右が三代目の瀬口裕章さん
まとめコメント
  • Youtubeで「おうちでまちゼミ!」を動画配信。配信したコンテンツはアーカイブとなり、商店街にとって長期的に有効なツールとなった。
  • Googleマイビジネスを活用し、商店街全体のイベントやお知らせ、各店舗の情報を効果的に発信。オンラインで商品を購入できる仕組みも構築した。
  • 多世代交流が可能な「まちゼミ」の活動、「SDGs商店街」視察団体の受け入れなどを通じ、商店街として、売買の場所だけでなく「学びや交流の場」の役割を担う。
データ
事業者名 魚町商店街振興組合
所在地 福岡県北九州市小倉北区魚町
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 91名
主な業種構成 飲食店、衣料・ファッション、飲食料品、不動産、整骨院、雑貨店など
URL 北九州市魚町銀天街公式サイト
https://uomachi.or.jp

魚町商店街振興組合 - YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCUWriVTH8yhpHbod8ejzFbA
 
事業者名 株式会社タウンマネジメント魚町
電話 093-521-6819
URL https://tmuomachi.jp/
 
北九州市小倉北区 人口:180,827人 世帯数:102,478世帯 出典:住民基本台帳(令和3年3月末日現在)