地域の学校と連携して物産展を開催。
子どもの感性を商店街の賑わいづくりに生かす

【大阪市生野区】
コロナに負けるな!Go To 生野本通中央商店街
地域・学生・商店街の協働イベント
「子ども物産展、SNS子ども広報体験&商店街Web構築」
事業実施主体:生野本通中央商店街振興組合
生野本通中央商店街振興組合理事長の進藤さん(中央)、大阪シティ信用金庫の守口さん(左)、森本さん(右)
JR寺田町駅から南東へ歩くこと約5分。生野本通中央商店街は、5つの商店街が東西約1kmにわたって連なる中央部分に位置する。同商店街では、数年前から「地域の人たちとの交流の場をつくる」をテーマに、商店街の活性化に取り組んでいる。今回採択された「子ども物産展」もその一環である。取り組みの内容について、同商店街振興組合の理事長である進藤成一さんにお話をうかがった。

背景・課題高齢化により廃業が進むなか、コロナ禍で来街者が8割減少

戦後の高度経済成長期に若い世代が中心となって次々に店舗を開き、形成されていった生野本通中央商店街。生鮮食品から日用雑貨、衣類までなんでも揃う商店街として地域住民に親しまれてきた。ところが近年、商店主の高齢化やスーパーの退店、借地権問題などさまざまな要因で廃業する店舗が増え、来街者は激減。「商店街そのものの存続が危ぶまれるようになった」と進藤さんは話す。

「商店主は60〜70代が中心。このまま指をくわえて見ているだけでは、ますます商店街は衰退してしまう。そこで、とにかくできることをやろうと、イベント開催などに本格的に取り組み始めたのが2012年のことです」

以来、「地域の人たちとの交流の場をつくる」をテーマに、近隣の学校や地域の団体と連携してさまざまなイベントを行い、賑わいの創出を図ってきた。ところが、2020年のコロナ禍がこの活動に冷や水を浴びせた。「十数年通ってくれていた常連さんの足も遠のき、お客さんが約2割まで減りました。当然、売上も激減です」と進藤さんは表情を曇らせる。

緊急事態宣言が解除されたあとの2020年8月、同商店街振興組合はコロナに打ち克つため、「子どもお店バトル」の準備を進めていた。これは2018年から開催しているイベントで、子どもたちがチームを組み、日本各地の特産品を商店街で販売するというものである。例年、参加者からも好評で、過去に新聞などのメディアでも取り上げられたこともある。2021年度には小学校も巻き込み、土曜授業の一環として開催することも計画していた。

「コロナ禍の影響で、すべて中止です。Go To 商店街事業においても「子どもお店バトル」で申請の準備を進めていましたが、それも取りやめざるを得ませんでした。参加予定だった子どもたちは、とても残念そうにしていました」

これに代わるイベントをどうにか開催できないか。地元の高校と相談して決定したのが、従来の8チームから、2チームへと規模を縮小して実施する「子ども物産展」である。Go To 商店街の申請内容を、「子ども物産展」の開催と商店街の情報発信ツールの制作に急遽変更して、採択に至った。

「子ども物産展」作戦会議の様子。小学生と高校生がチームを組み、当日の販売戦略を立てる

取組内容子どもたちがセレクトした地方の特産品を商店街で販売

「子どもお店バトル」は、子どもたちに商売の楽しさを知ってもらいたいという進藤さんの想いと、近隣の高校の授業内容が合致してスタートした。小学生と高校生がチームを組み、決められた予算内で商品を仕入れ、その販売利益を競う。「子ども物産展」はこの基本ルールを踏襲しながらチーム数を減らし、バトルではなく販売を楽しむというコンセプトで行われた。

Go To 商店街事業で採択された「子ども物産展」には、近隣の小学生6名と地元のプール学院高等学校の生徒5名が参加した。Go To 商店街事業において販売したのは、福島県と島根県の特産品。大阪にある各県のアンテナショップから仕入れ可能な商品をリストアップしてもらい、その中から販売する商品を選択。当日までに数回、子どもたちが集まって「作戦会議」を実施し、商品のセレクトや販売方法の考案、ワゴンの飾り付けなどを行った。

こうしたイベントの実施にあたって、進藤さんが大切にしているのが子どもの自主性である。

「作戦会議では、実際の商品を用意して試食したり触ったりしてもらい、子どもたちのやる気を引き出しています。時間がかかっても、子ども向けの商品ばかりが選ばれても構いません。大人が勧めるより、子どもたちが自分で商品を選んだほうが、当日販売するときに気合が入ります」

イベント当日は、マスクの装着や距離の確保などの感染症対策に努めながら、子どもたちは元気よく来街者に商品を売り込んだ。その甲斐あって物産展は活況となり、お菓子やラーメン、ドリンクなど、用意した約160点の商品が昼過ぎには完売となった。進藤さんは写真を指差しながら、「大人が店を出すよりずっとにぎやかでしたよ。どれだけ楽しかったかは、子どもたちの笑顔が物語っています」と当日のことを教えてくれた。

「子ども物産展」に参加した子どもたち。商品が完売し、達成感に満ちた笑顔を見せている

多様なメディアを駆使して商店の魅力を発信

進藤さんたちは、商店街の情報発信にも力を入れた。予算をかけてチラシやポスターを制作し、店頭配布や駅への掲出を実施。さらに、プール学院高等学校の放送部が商店街を取材して魅力を伝える「SNS子ども広報体験」も行った。そのインタビュー動画は、現在もYouTubeにアップされている。

このほか、ホームページのコンテンツの充実、パンフレット制作、商店街のニュースを伝えるフリーペーパー「アオハル通信」の制作など、積極的にPR活動に取り組んだ。さらに進藤さんは、地元のメディアにも直接告知を行っている。これが功を奏し、イベントを開催した際には新聞やケーブルテレビが取材に訪れ、より多くの人が同商店街を知るきっかけになった。

左:「SNS子ども広報体験」では生野本通中央商店街のYouTubeチャンネルも開設した。(youtubeを開く
右:「子ども物産展」のレポート動画。プール学院高等学校の放送部がナレーションを担当した(youtubeを開く

子どもが主役のイベントゆえに、将来への期待も膨らむ。商店街の活性化は、いかに若い世代を取り込めるかがカギになる。

「子どもたちがこの体験を楽しいと感じてくれたら、将来、商店街でお店を構えたいと思うかもしれない。お子さんに付き添って訪れた親御さんも、商店街を見る目が変わって利用してくれるようになるかもしれません」

だからこそ、中途半端にはできない。「手を抜かず、参加して良かった、と思ってもらえる値打ちのあるイベントにしたい。そうすれば、いずれ自分たちに返ってくると思います」と進藤さんは話す。

この数年で新規店舗もオープンした。空き地を活用した特産品販売スペース「アオハル広場」では、週に2回パンの移動販売が行われ、備え付けのイスでくつろぎながら食べる人々の姿も見られる。進藤さんたちがコツコツと続けてきた取り組みが実を結び、商店街の雰囲気は変わりつつある。

左:商店街の魅力を伝えるフリーペーパー「アオハル通信」
右:イベント後は「よく売れたで賞」や「よくがんばったで賞」で子どもたちを表彰

将来の構想未来を担う子どもたちの感性を生かして商店街を盛り上げていく

同商店街の周辺には、産業を学べる高校が多い。その立地を生かし、商店街ではこれまで生野工業高校との「ものづくり大会」や、ビジネスフロンティア高校との「子どもお店バトル」など、地元の高校と連携したイベントを開催してきた。

その一方で、地域活性化をサポートする大阪シティ信用金庫の企業支援部や、イベントを後援する社会福祉協議会など、さまざまな地域の団体の力も借りてきた。進藤さんは、そのつながりを何より大事に考えている。

「私たちが取り組んでいることが、商店街の問題解決に直結するとは思っていません。しかし大切なのは、その時その時のできることをコツコツやっていくことです。地域の方々と一緒に頑張ることで、道は拓けると思います」

大切なのは、取り組みを継続させること。進藤さんたちは、ホームページやSNSの更新はもちろん、「子どもお店バトル」や「子ども物産展」などのイベントも今後続けていく。「アオハル通信」の第2号は、目下、プール学院高等学校の学生が制作中だ。

「Go To 商店街の取り組みは、集客への足がかり。それをどう生かすかは、自分たち次第でしょう」と進藤さんは決意を新たにする。次世代を担う子どもたちの感性と、その感性を大切に育てていく地域の力が、商店街の未来を切り拓いていく。

まとめコメント
  • イベントの主役は地元の子どもたち。商店街が立案した企画に、小学校と高校が連携して参加することで、地域ぐるみの事業となった。
  • 商店街、地元の学校、地元の企業、社会福祉協議会、他県のアンテナショップ等、さまざまな団体が力を合わせた取り組みを行うことができた。
  • 地元の高校生による取材動画を配信し、これから地元を支える子どもの目線でのPRができた。また、商店街紹介HPのコンテンツも充実させた。今後は商店街紹介のフリーペーパーも高校生主導で制作予定。課題としていた情報発信も様々な形で取り組めた。
  • 子どもが主役となることで、その親も含めたファミリー層への商店街への親しみを醸成できた。
データ
事業者名 生野本通中央商店街
所在地 大阪府大阪市生野区林寺周辺
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 38店舗
主な業種構成 精肉、駄菓子、飲食、衣類、雑貨、土産物など
電話 06-6717-8205
URL 生野本通中央商店街HP
https://ikunohondori13020.wixsite.com/mysite
生野本通中央商店街YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCP_5PzpGN_Mb0-xDK1UkIaw
 
大阪市生野区 人口:126,930人 世帯数:72,517世帯
出典:大阪市HP 推定人口(令和3年3月末日)