「国生み神話」を基盤にまちをブランディング。
めざすのは年間180万人に達する参拝客の取り込み

【兵庫県淡路市】
よみがへる!開運まちアソビ
事業実施主体:ウエストコーストぐんげ商店街協同組合
ウエストコーストぐんげ商店街協同組合理事の大杖康之さん。商店街の一角には、「国生み神話」ゆかりの神々のモニュメントが建立されている
淡路島にある「ウエストコーストぐんげ商店街」。日本遺産にも認定されている伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)の「国生み神話」になぞらえて、長年、地域ブランディングを行ってきた。今回のGo To 商店街事業の採択では、趣向を凝らしたイベントを開催し、多くの集客を達成。これまでのブランディングの取り組みを具体化させ、まちおこしの基盤を一層強固なものとした。その取組内容について、同商店街協同組合理事の大杖康之さんにお話をうかがった。

背景・課題地域に伝わる神話をテーマにまちのブランド化に取り組む

ウエストコーストぐんげ商店街は、淡路島の西岸に位置する郡家(ぐんげ)地区にある。1995年の阪神淡路大震災では、多くの建物が全半壊の被害を受け、復興が大きな課題となった。「今から50年前、私たちが子どものころは、このまちは淡路島のなかでもとくに賑わいがありました。その賑わいをもう一度取り戻そうと、震災をきっかけとして地域一丸となって活性化の取り組みを始めました」と大杖さんは振り返る。

その際、まちおこしの目玉として注目したのが、商店街から東に1.3Kmほどの場所にある伊弉諾神宮である。伊弉諾神宮は、日本列島を生み出したとされるイザナギノミコトとイザナミノミコトの2神を祀る日本最古の神社であり、「国生み神話」発祥の地ともされている。

「これからの地方創生は、新しいことにお金をかけるのではなく、今ある資源をどう活用するかが大切だと思います。そこで伊弉諾神宮という財産を生かし、国生み神話をブランド化することから始めました。ゆくゆくは伊弉諾神宮に訪れる参拝客を商店街に誘致し、まちの賑わいを創出しようと考えたのです」

かつて賑やかだった郡家地区も過疎化が進み、現在の人口は1,000人に満たない

それからの十数年間は、「国生み神話」を広く知ってもらうことに努めた。2008年からは、年に一度、「三大神話神楽祭」を開催。天孫降臨を伝える「高千穂の夜神楽」(宮崎県)、国譲り神話を伝える「出雲神楽」(島根県)と合わせて、淡路島でつくられた「国生み創生神楽」を披露している。

このほか、全国から人を集めるためのさまざまな施策を実施。それが奏功して、これまで島外の人にはほとんど認知されていなかった「国生み神話」が徐々に浸透。2016年には「国生みの島・淡路」が日本遺産に認定され、年間180万人もの参拝客が訪れるようになった。

そして2018年からは、いよいよこの参拝客を商店街に呼び込むための施策を本格始動した。「国生み神話」にも記されている“よみがえり”をテーマに掲げ、郡家を「よみがへるまち」として全国に発信。イベント開催はもちろん、阪神淡路大震災で倒壊した伊弉諾神宮の鳥居の石を使って神々のモニュメントを商店街に建てたほか、人力車でまちを案内するサービスも始めた。

取組内容3万人の参拝客をターゲットに、多彩な仕掛けで集客を実現

Go To 商店街事業で採択されたのは、2020年11月21〜23日の3連休に行われた「よみがへる!開運まちアソビ」と題されたイベントである。連休中、伊弉諾神宮を訪れる約3万人の参拝客を商店街に呼び込むために、同商店街協同組合の有志メンバーが力を合わせて数々の仕掛けを用意した。

たとえば、伊弉諾神宮の大鳥居の横で、「こころとからだがよみがえる」をテーマにした物産店を開催。参加各店ではイザナミが黄泉の国から帰るきっかけとなった「桃」をモチーフに、お香や和菓子、Tシャツなどの商品を開発した。そして物産を購入した参拝客には抽選券を配布し、商店街で抽選会を実施。特賞の淡路和牛をはじめ、空くじなしの抽選会は大好評で、多くの参拝客が商店街まで足を延ばしてくれた。「用意していた1500点の景品は、3日間ですべてなくなりました」と大杖さんは誇らしげに話す。

「桃」をモチーフに、お香や和菓子、Tシャツなどの商品を開発した

さらに期間中は、商店街内に設けた特設ステージでトークショーやダンスなどの「伝統芸能祭」を開催。また、空き店舗を活用した地域交流施設「神楽みゅーじあむ」を総合案内所として開放し、オープンカフェやバザーのほか、竹細工体験も実施した。

竹細工体験、ヒンメリ(麦わらでつくるモビール)作り体験、ふわふわ遊具も好評だった

そしてイベントでとくに好評だったのが、「神様のお香占い無料体験」。淡路島は、線香の国内生産シェア約8割を誇る名産地である。そこで地元のメーカー13社と伊弉諾神宮がコラボレーションし、「伊弉諾尊の香り」などと名付けた13種類のお香を開発。占いを体験した参拝客に無料でお香をプレゼントするというコーナーを設けた。神様にちなんだ香りと、ここでしか手に入らないというプレミア感に惹かれ、参拝客が行列をなしたという。

「予算の都合上、これまでは大規模な商品開発やイベントはなかなかできなかったのですが、Go To 商店街事業に採択されたことで、以前からあたためていた構想を実現できました。充実した内容で来街者をもてなすことができて、とても満足しています」

地元のお香メーカー13社と神宮がコラボレーションし、「伊弉諾尊の香り」などと名付けた13種類のお香を開発

イベントの成功によって高まる、まちおこしの求心力

イベントの成功は3日間の集客そのものより、「よみがへるまち」として全国に発信していくための基盤が固まったことにある。大杖さんは「今回のイベントで培った集客やチラシ制作のノウハウを生かし、今後も取り組みを継続していく」と意気込む。物産店は独立採算の形を取り、365日オープンできる態勢を整える。今回のように物販と商店街の抽選会などと絡めれば、日常的に商店にも足を運んでもらえるはずだという。

イベント後は、商店主の反応も変わってきた。

「開催前は『こんなイベントで集客なんてできるのか』という懐疑的な人も多かったのですが、成功したことで皆さん関心を持ち始め、まちおこしへの気運が高まっているのが分かります。これまでまき続けてきた種がようやく実になりました」


とくにこの2〜3年、淡路島には都市部の企業移転や若い移住者が増え、まちおこしに積極的に参画している。たとえば、同商店街の近くにある廃校を神戸市の企業が購入し、改修して新たな交流拠点としてよみがえらせようとする動きもある。

「この企業の社長が“よみがえり”のテーマに興味を持ってくれました。イベントになると、若い従業員の方たちが手伝いにきてくれます。そういう人たちの姿に、若手店主たちも刺激を受けて、一緒にまちを盛り上げようと力を貸してくれるようになりました」

大杖さんは、最近では商店街のみならず、地域に新しくオープンした飲食店などにも“よみがえり”にちなんだ商品開発を呼びかけているという。商店街と企業、若者の想いのベクトルが重なり、いっそう強い力となってまちを変えようとしている。

「若い人たちの力に期待している」と話す大杖さん

将来の構想若者を巻き込んで地域全体をブランディング。商店街に活気をもたらす

今後の課題は、まちおこしメンバーの“若返り”である。

「この27年間やってきたことを、次の世代に受け継いでいきたい。今回、大まかな道筋は私たちがつけましたが、各委員会の活動はすべて若手に任せました。 “よみがえり”という基盤がぶれない限り、若者の斬新なアイデアを私たちベテランはどんどん受け入れていきます。若者がやりたいと思うことを実現させてあげることが、彼らのモチベーションになりますから」

現在はコロナの影響で大々的な集客イベントを開催することは難しい。しかし、若い移住者のアイデアで、廃業となった店のシャッターにアートを描いて撮影スポットにするなど、商店街活性化の取り組みは続けられている。また周辺では、古民家再生や子ども食堂の立ち上げ、廃業した銭湯の復活など、新しい試みが次々と計画されている。

「私たちの目標は、商店街だけでなく、伊弉諾神宮のあるこの地域全体をブランド化していくことです。“よみがえり”のブランディングや情報発信を10年、20年と継続すれば、日本だけでなく世界中に『淡路島といえばよみがえりの島』というイメージが浸透すると考えています。淡路島に来れば『リフレッシュできる』『元気になれる』と思ってもらいたいですね」

震災で一度は大きなダメージを受けたまちが、神話と重なって、今まさによみがえろうとしている。

まとめコメント
  • 商店街の近くにある伊弉諾神宮の「国生み神話」をブランド化。全国から訪れる参拝客を商店街に呼び込む戦略で、まちおこしを長年継続してきた。近年では神話の中の“よみがえり”のエピソードをテーマとした商品開発やモニュメントの建立などで、まちのブランディングを行っている。
  • Go To 商店街にて、イベント「よみがへる!開運まちアソビ」を実施。よみがえり神話の「桃」をモチーフに、和菓子や地域名産のお香など、新たな商品の開発・販売を通して、地域の魅力を発信することができた。
  • 島外から移転してきた企業や若い移住者が“よみがえり”のテーマに興味を持ち、まちおこしに協力。新しい力が加わったことで、商店の若手店主も活性化への取り組みに積極的になっている。
  • 商店街を支えるメンバーを次の世代にバトンタッチし、今後10年、20年という長期間で「淡路島といえばよみがえりの島」という地域全体のブランディングを目指している。
データ
事業者名 ウエストコーストぐんげ商店街協同組合
所在地 兵庫県淡路市群家周辺
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 12店舗
主な業種構成 精肉、青果、飲食、呉服、カフェ、美容室
電話 0799-70-1010
URL http://westcoast-gunge.net/
 
淡路市 人口:42,891人 世帯数:20,168世帯 出典:住民基本台帳(令和3年7月1日)