従来の集客型イベントからの脱却、
SNSによる動画発信で50年先も愛される商店街へ

【滋賀県守山市】
守山50 Go To 商店街
事業実施主体:守山銀座商店街振興組合、守山中央商店街、ほたる通り商店街、株式会社みらいもりやま21
株式会社みらいもりやま21ゼネラルマネージャー石上僚さん
JR守山駅と旧中山道を結ぶ3つの商店街「守山銀座商店街」「守山中央商店街」「ほたる通り商店街」とまちづくり会社「みらいもりやま21」が共同で申請し、滋賀県では初めての採択となった。

2020年守山市が50周年を迎えることと掛け合わせ、50年後も愛される商店街となるために、50日間で50の企画(最終的には62の企画)を実施。3つの商店街を取りまとめ、中心となって事業を企画・立案した、まちづくり会社「みらいもりやま21」ゼネラルマネージャーの石上僚さんにお話を伺った。

背景・課題3つの商店街&まちづくり会社が共同申請

京都や大阪へのアクセスの良いベッドタウンとして知られる守山市。ここ数年、駅周辺は開発が進み、人口も増加し続けている。若い子育て世代の人口構成割合が高まり、守山市としても子育てしやすいまちづくりを推し進めてきた。

夏には約5万人もの来場者が押し寄せる夏祭り、12月には中山道守山宿一帯に出店がずらりと並ぶ歴史的伝統行事である「もりやまいち」など、商店街が賑わいを見せるイベント行事が毎年のように開催されてきた。まちをあげての一大イベントのようにも思えるが、実はこれまで3つの商店街が共同で催しをする機会は多くはなかったという。

2020年8月、守山市のまちづくりを担うまちづくり会社「みらいもりやま21」の新代表取締役に鵜飼重樹氏が就任。守山駅周辺だけではなく、活性化の対象地域をさらに広げる方針を示した。その先駆けとして、3つの商店街と連携して事業を実施すべく、まちづくり会社が事務局となってGo To 商店街事業への共同申請に至った。

申請に至る段階でまちづくり会社としての役割が非常に重要だったという。「日頃からまちづくり会社として3つの商店街とコミュニケーションが取れていたからこそ、募集開始から応募まで約1週間という非常に短い期間で3つの商店街がまとまり、事業の企画立案が出来た。まちづくり会社が事業資金の一旦立替を担保したことで、スムーズに申請できた」と石上さん。

守山銀座商店街振興組合理事長北田照夫さん(左)と石上さん(右)

取組内容1万人の集客より1万回の動画再生が目標

コロナ禍で、果たして本当に多くの人を集めてイベントを実施してよいものか。集客数はイベント主催者側のエゴであり、来場者の満足度や売上、地域活性化には直結しないという。そういった状況や課題を背景に、価値観と発想の転換により生まれたコンテンツがSNSを活用した動画発信である。

「1万人の集客より1万回の動画再生」をキーワードに、来客数が多ければよいという考えを捨て、記録を残すことができる映像制作に大きく予算を割り当てた。

「50の企画の中で集客を伴うイベントも実施。万全なコロナ対策の下で開催し、たまたま何も無かったとはいえども、今の時代と照らし合わせると開催してよかったとも一概には言えない。動画で発信することで、単発のイベントに終わらず、守山市内外の多くの人にも守山のよさを知ってもらえる、まさに今の時代に合った企画だ」と石上さん。

万全なコロナ対策の下で開催した「もりやまいち」

子育てのまちとして子育て世代に訴求できるコンテンツを

集客型のイベント、例えばバルイベントなどを開催したところで、子育て世代の人達は参加しにくい事情もある。子育てしやすいまちづくりを推進しているからには、その背景に沿った企画が必要と考え、生まれたのが『はじめてのおつかい』である。

市内に住む子どもたちによる地元商店街へのおつかいを撮影し発信することで、子どもたちの成長を見守り応援すると同時に、商店街の温かさを知ってもらおうという、「守山50 Go To 商店街」の目玉企画である。そしてこの企画が50を超える数ある企画の中で最大のヒットコンテンツとなった。

「守山市は子育て世代が多いまち。だからこそ、その世代に興味を持ってもらえるコンテンツを作りたかった。何より発信したかったのはお店の宣伝ではなく、地元商店の方々の温かさ、地域の大人たちが子どもたちを温かく見守る姿だった。まちをあげて子どもを応援、子どものためにこんなことをやってくれるんだというイメージを作ることができた」と石上さん。

はじめてのおつかい 咲心ちゃん・心夏ちゃん(youtubeを開く

極めて難しい企画だったからこそ築けたノウハウ

石上さんは『はじめてのおつかい』を制作するにあたり、やるとは言ったもののどうやってやるのか全く分からず見切り発車だったと認めている。しかし滋賀県で初の採択となり、テレビや新聞など各メディアに取り上げられ、『はじめてのおつかい』をやると公言した以上、何が何でも成功させる必要があった。

実行委員会による説明会に地元の複数の事業者が集められた。企画内容をふまえ、制作協力に名乗りをあげた業者はわずか1社だった。制作期間も短く、撮影・録音する方法や編集にかかる時間や労力など、未知な部分があまりにも多く、ほとんどの業者が躊躇する中、唯一手を挙げた地元映像制作会社の代表は「金額うんぬんより何よりもおもしろそうだった。自分もやったことのない領域だったが、この制作を通して自分自身も成長できると思ったから名乗りを上げた」と語る。

その1社が主導となり、脚本から撮影・編集までを行った。出来上がった動画に対して「ここまでのものができるとは思っていなかった。寄せられた反響も大きく、感動した、素晴らしい企画だなどの声をたくさんいただいた。地元業者と共にノウハウ、スキルも得ることができて、今後も継続、そしてさらに良いものを作れる確信が持てた」と石上さん。

はじめてのおつかい 左:健志くん(youtubeを開く) 中:花ちゃん・太郎くん(youtubeを開く) 右:紗代ちゃん(youtubeを開く

予想をはるかに超える動画再生数で今後の活性化に繋がると期待

各種メディアで『はじめてのおつかい』を制作しようとしていることを取り上げられた結果、出演を希望する家庭からの問い合わせが殺到したという。市内の保育園児及び幼稚園児を対象に出演者を公募し、応募者の中から慎重な選考を重ねた結果、この『はじめておつかい』には計4組の親子が出演。それぞれ4本の動画を制作。

その他、複数の動画がYouTubeの「みらいもりやま21守山50商店街チャンネル」に公開されている。結果、合計10万再生回数に届きそうな勢いで現在も伸び続けている。当初の目標をはるかに超える成果である。このような結果に石上さんや制作会社だけでなく、商店街やまちの人達も喜びの声をあげている。

「仮に集客型イベントを実施して1万人の集客があったとしても、どれだけの人がおもしろいと感じてくれているか。動画再生数は一つの目安だが、それだけの人が観ているのは事実。おもしろくなければ、興味を持たれず観られない。観た人からたくさんの反響をいただけたことが何よりの成果だ」と石上さん。

将来の構想50年後も愛され続ける商店街であるために

撮影に協力した商店の方々はお店をきれいにしたり、買い物客とできるだけコミュニケーションを取るように努力されたそう。商店街の人は愛想がない、常連客以外には冷たいという、ありきたりな商店街へのイメージを払拭すべく、それぞれのお店が改善に取り組むいいきっかけになったという。

「接しやすく、感じの良いお店の人が世間話もしてくれて、時には相談にものってくれる、スーパーやコンビニにはない商店街の本来の良さ、それを再認識してもらうことができた」と石上さん。

そして、今回のGo To 商店街事業には、今まで関わってこなかった数多くの事業者が関わり、特に若い世代の活躍も大きかったという。「今後、若い世代に任せていこうと、組織の中でも話が出ている。若い人達が中心となって、まちを盛り上げてくれるだろう」と石上さん。

昨年2020年、守山市は市政50周年を迎えた。この先50年後も愛され続ける商店街であるために、これまで商店街の人達が築き上げてきたまちの伝統や魅力を守りつつ、若い世代の人達がさらに魅力あふれるまちを築き上げるために活躍してくれることが期待される。

まとめコメント
  • 予算の多くを動画制作やSNS発信に利用し、単なる一過性の集客イベントとして終わらせることなく、商店街の魅力を継続的に発信できる仕組みが構築されている。
  • 『はじめてのおつかい』を制作したことで、子育てのまちを大いにアピールでき、地域の人々に商店街の良さや温かさを再認識してもらえた。また商店街組合員の意識改善にもつながる良い機会になった。
  • 守山の魅力や取り組みが市外の広い範囲にも周知され、より多くの方々が訪れるきっかけに繋がっている。
  • これまでにない取り組みを実施したことで、関わりのなかった事業者や若い世代との繋がりを新たに構築でき、新しいアイデアや人脈を今後の商店街活動に活かすことが見込まれている。
  • 商業者の思いや地元の課題を認識しているまちづくり会社が、資金面や各団体の統制において主導することで円滑に事業が進み、新しいことにもチャレンジしやすい環境が整っている。
データ
事業者名 守山銀座商店街振興組合
所在地 守山市守山1丁目周辺
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 12店舗
主な業種構成 雑貨、銀行、飲食、塾、和菓子、文房具
電話 077-582-3251
URL http://ginzagai.jp
 
事業者名 守山中央商店街
所在地 守山市守山1丁目~2丁目、中山道守山宿周辺
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 15店舗
主な業種構成 和菓子、文房具、酒類販売、ガス販売、雑貨
電話 077-582-2054
 
事業者名 ほたる通り商店街
所在地 滋賀県守山市今宿周辺
商店街の類型 地域型商店街
組合員数 17店舗
主な業種構成 喫茶、飲食、金物、生花、雑貨、理美容
電話 077-582-2168
URL https://www.hotaru-st.net
 
事業者名 株式会社みらいもりやま21
電話 077-514-8321
URL http://moriyama21.jp/
 
守山市 人口:84,625人 世帯数:33,629世帯 出典:住民基本台帳(令和3年4月末日)