コロナ禍で苦境に立たされている飲食店を元気づけるために
食の新名物「千葉さんがフェスタ」を開催

【千葉県千葉市】
千葉さんがフェスタ
事業実施主体:公益社団法人千葉市観光協会
千葉市観光協会副会長の早野友宏さん
近年、千葉市を訪れる観光客は増加傾向にある。しかしその一方で、千葉には全国的に知られるご当地グルメが少なく、“食の魅力”のPR不足が課題となっていた。そこで同市観光協会は、2018年7月に「千葉美食研究会」を発足させ、新名物「千葉さんが」を開発。2019年11月から市内の飲食店で提供を始めた。
しかしその矢先、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、市内の飲食店利用者は激減した。そこで、同会は飲食店の需要喚起と「千葉さんが」のPRを目的に、「千葉さんがフェスタ」を開催。「千葉さんが」開発の経緯や「千葉さんがフェスタ」の成果などについて、千葉市観光協会副会長の早野友宏さんにお話をうかがった。

背景・課題“食の魅力”の発信力不足が長年の課題

東京ディズニーランドや成田山新勝寺、幕張メッセなど多数の観光施設が集まる千葉県は、近年、観光客の増加傾向が続いていた。県庁所在地である千葉市もまた、インバウンド誘致の成功などにより、観光客は増加傾向にあった。2013年に約144万人だった同市の宿泊者数は、2019年に約278万人と6年で2倍近くまで増加。しかし、千葉市観光協会副会長の早野さんは、「『食の魅力』に関しては発信力不足で、長年、課題に感じていた」と話す。

「千葉には、海の幸も、山の幸も豊富にありますが、これといったご当地グルメがありません。観光客からは『千葉で何を食べていいのか、わからない』という声もよく上がっていた。より多くの方々に観光に来ていただくためには、宇都宮のギョーザや喜多方のラーメンのように、『千葉といえばコレ』といわれる新名物をつくる必要があると考えていました」

早野さんは、千葉県を中心に多数の飲食店を経営。そのうちのひとつ、「すし波奈 千葉富士見店」でお話をうかがった

そこで早野さんは2018年7月、観光協会会員の飲食関連事業者とともに「千葉美食研究会」を立ち上げて、委員長に就任。定期的に話し合いを重ねるなかで、新名物の候補として浮上してきたのが、郷土料理の「さんが焼き」だった。

「さんが焼き」は、アジなどの魚とみそを一緒に細かく叩いてつくる「なめろう」を焼き上げたものである。発祥地については諸説あるが、千葉市の寒川地区、または内房地域が有力とされている。「千葉美食研究会」では、この「さんが焼き」にアレンジを加え、「千葉さんが」を開発。2019年11月から、同会の取り組みに賛同する飲食店で提供を開始した。

「『千葉さんが』として認められる条件は、①肉・魚などの食材を細かく切り②みそ・ネギ・大葉・ショウガ(・落花生)等を加えることの2つです。これらの条件さえ満たしていれば、食材の種類はもちろん、生、焼き、揚げ、蒸しなど、調理方法も自由です。各店がオリジナリティに溢れる『千葉さんが』を創作しやすいようにしました」

「すし波奈 千葉富士見店」で提供している「千葉さんが」(左)。「なめろう」(右)を大葉で包み、香ばしく焼き上げている

「千葉さんが」の提供開始当初から、千葉市観光協会は、チラシを撒いたり、周辺駅や宿泊施設にポスターを貼ったり、地道な宣伝活動を続けてきた。その甲斐あって、徐々に認知が広まり、「千葉さんが」に関する問い合わせも増えつつあった。しかしその矢先、新型コロナウイルス感染症が猛威をふるう。2020年4月以降、千葉市内の飲食店の多くが営業時間短縮や休業を余儀なくされ、苦しい経営を強いられた。早野さんが経営する店も「売り上げは20%程度まで落ち込んだ」という。

コロナ禍で失われた飲食店の活気を取り戻したい。地元食材を使った新名物の認知度を高めたい。こうした思いから、早野さんはGo To 商店街の支援を受けて、「千葉さんがフェスタ」を開催することにした。

取組内容地元の飲食事業者が連携して「千葉さんがフェスタ」を開催

「千葉さんがフェスタ」は、2020年11月7~8日の2日間にわたって開催された。メイン会場となったのは千葉駅南口の「えきよこ広場」。「千葉美食研究会」に所属する市内の飲食店が、各店オリジナルの「千葉さんが」を来場者に販売した。

「和食だけでなく、イタリアンをはじめ、洋食のお店も参加いただいて、メイン会場の他に市内33の飲食店で串焼き、天ぷら、ハンバーグ、ピザ、パスタ、アヒージョ……など、じつにバラエティに富んだ『千葉さんが』が提供されました。メイン会場の事前予想は、2日間で400~500人にご来場いただければ十分だと思っていましたが、ふたを開けてみれば2000人以上が来場され、料理の提供が追い付かなくなるほどの盛況ぶりでした」

会場には千葉県PRマスコットキャラクター「チーバくん」も駆けつけた。キッチンカーも2台登場し、さまざまな「千葉さんが」が来場者にふるまわれた

Go To 商店街の支援金約300万円は、おもに会場の使用料やキッチンカーのレンタル料、会場整理に当たったスタッフの人件費などに充てられた。「もしGo To 商店街の申請が通っていなかったら、規模を縮小せざるを得なかった。支援金をいただけて、本当によかった」と早野さんは胸をなでおろす。

メディアでも取り上げられ、「千葉さんが」のPRに成功

会場内には地元農産物や地酒の販売ブースも設置。入り口では、検温と手指の消毒を実施するなど、感染症対策も徹底した。来場者からは、「コロナの影響でなかなか食のイベントに行けず残念だったが、ひさしぶりにイベントを楽しめてよかった」「初めて『千葉さんが』を食べたが、身が詰まっていておいしい。お酒の肴にもよさそう」などという声が寄せられた。

特産品や地酒の販売コーナーも大いに賑わった

「千葉さんがフェスタ」の賑わいは、地元の新聞やテレビでも取り上げられた。メディアを通じて、幅広く「千葉さんが」をPRすることに成功した。開催期間中は、近隣の商店へ客が流れるなどの波及効果もあったようで、会場近くのデパートや千葉駅の関係者から「すごい賑わいで驚いた」「来年も開催してほしい」といった好意的な意見が多数届いたという。コロナ禍でのイベント開催だったが、地域から批判の声はほとんど上がらなかった。

また、参加した加盟店の多くは、「千葉さんがフェスタ」開催後に、一時的に利用客が増えたという。しかし、ほどなくして緊急事態宣言が出されたことで、再び客足が遠のくことに。「できれば第2回、第3回と続けて開催したかった。千葉ではオリンピック競技も開催されるので、絶好の機会だったが……。コロナが終息したら、心機一転、インバウンド向けのイベントも開催したい」と先を見据えている。

将来の構想「千葉さんが」の提供店を増やし、千葉を「美食のまち」に

現在、「千葉さんが」は、市内の33店舗で味わえる。それらのお店は「千葉美食研究会」に認定された証として、店先に木製看板を掲げている。早野さんは、「この看板を掲げるお店を、100店舗まで増やすことが目標」という。

「お店の方からは、この看板を見て入店するお客さんも増えていると聞いています。もっとオリジナルの『千葉さんが』を提供してくれるお店を増やして、『千葉の名物といえば、千葉さんが』と言われるように育て『美食のまち千葉』を実現していきたい」

「千葉美食研究会」の認定証である木製看板。この看板が掲げられているお店で「千葉さんが」を味わえる

目下、千葉市観光協会では、108か国語対応のホームページでの案内に加えて、スマートフォンのGPS機能を使って、近くの「千葉さんが」提供店を検索できるサービスの検討を進めている。このサービスが完成すれば、食べ歩きもしやすくなる。参加店をめぐるスタンプラリーなどのイベントを開催しても面白そうだ。

「本来、飲食店同士はライバルであって、なかなか協力体制がとれないものです。しかし、今回は地元のために心をひとつにして、一致団結することができました。今後、コロナ禍が終息したとしても、飲食店の需要は以前のようには戻らないと思います。飲食店にとっては大変な時代がやってきますが、地域連携で乗り切ります。若い人が、千葉で飲食店を経営することに、希望をもてるようなまちにしたいですね」

まとめコメント
  • 食の魅力発信強化のために開発した新名物「千葉さんが」をPRするためのイベント「千葉さんがフェスタ」を開催。
  • 「千葉さんがフェスタ」には、コロナ禍の影響で冷え切ってしまった飲食店利用の需要喚起を図り、賑わいを取り戻すという目的もあった。
  • 市内の飲食店が連携し、「千葉さんが」を提供することで地元農水産物の消費を促進。魚だけでなく鶏肉、豚肉などの肉類も主要な食材としたことで、季節要因や不漁などに関わらず、通年で新名物の提供が可能になった。
  • 参加店に「千葉さんが」を提供していることが分かる販促ツールの看板を配布することで、地域の一体感を醸成するとともに、「美食のまち、千葉」のブランディングに活用。
データ
事業者名 公益社団法人 千葉市観光協会
所在地 千葉県千葉市中央区
会員数 672会員
主な業種構成 飲食、宿泊施設、サービス業
電話 043-242-0007
URL https://www.chibacity-ta.or.jp/
 
千葉市中央区 人口:212,351人 世帯数:110,461世帯
出典:千葉市HP 推計人口(令和3年7月1日現在)