「人」「モノ」「サービス」を結び
地域全体を活性化するノウハウを確立

【鳥取県米子市】
地ビールフェスタin米子
事業実施主体:角盤町商店街振興組合、鳥取県酒造組合、皆生温泉旅館組合
左から、地ビールフェスタin米子実行委員会 東條勝弘さん、角盤町商店街振興組合代表理事 森紳二郎さん。
鳥取県米子市の角盤町商店街では、2018年より毎月月末金曜に「地ビールフェスタin米子 」を開催している。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月から9月までの間、イベント中止や規模縮小を行ったため、波及効果があった近隣の皆生温泉旅館街や地元酒造業界も打撃を受け、地元経済は深刻な危機に陥っている状態だ。

そこで今回新たに、皆生温泉旅館組合および鳥取県酒造組合と連携して「Go To 商店街」にエントリー。採択された「地ビールフェスタin米子」の新企画実施で、周辺エリアには少しずつ活気が戻りつつある。
成功の秘密は、商店街の周辺エリアに点在する「人」「モノ」「情報」を線で結んでコンテンツ発信を行い、広域に送客できるスキームを継続している点だ。

角盤町商店街振興組合代表理事の森紳二郎さんと、「地ビールフェスタin米子」実行委員会の東條勝弘さんにお話を伺った。

背景・課題郊外型ショッピングモールの進出により
商環境が変化、来街者が減少

JR米子駅から徒歩約15分のロケーションにある「角盤町商店街」が、「地ビールフェスタin米子」の実施によって賑わいを取り戻しつつある。国道9号線沿い、米子市役所や米子市公会堂周辺の市街地に、百貨店や衣料品店、化粧品店、薬局をはじめとする、昔ながらのアーケードの下に個人店舗が立ち並ぶ中心市街地商店街だ。

この商店街には、かつて2つの大型デパートがあった。最盛期の昭和50〜60年代には、週末の「土曜夜市」開催が名物であり、多くの家族連れなどで賑わった。近隣の飲食店街もまた、通りを行き交う人の波で大変混雑し、すれ違う人と人の肩同士がぶつかるほどの盛況ぶりだったという。
しかし平成に入って以降、郊外型ショッピングモールの相次ぐ進出なども影響し、地域の商環境や人の流れは一変。近年は、来街者の減少と活気の消失が大きな課題となっていた。

商環境の変化で来街者の減少が課題となっていたが、「地ビールフェスタin米子」の開催で再び活気を取り戻した。

かつての「土曜夜市」の
賑わいを取り戻す

この状況を打開すべく考案された施策が「地ビールフェスタin米子」だ。
「この商店街に、かつての土曜夜市の賑わいを取り戻したかったんです」と語る森代表理事。
土曜夜市とは、商店街のアーケード内に、飲食や縁日といった出店が立ち並ぶだけでなく、バンドやダンスのステージも見られるなど大変賑やかなお祭りだった。そこへ親子連れやカップルなど多くの人が連れ立って集まれば、角盤町商店街自体が賑わうだけではなく、近隣の飲食店街にも波及効果を見込むことができ、周辺エリア全体での活性化につながっていく。

「地ビールフェスタin米子」は言わば、かつて米子の風物詩であった土曜夜市を今風にアレンジして復活させたものなのだ。小規模な醸造所が手掛ける「地ビール」「クラフトビール」というジャンルは、昨今の食のトレンドの一つでもある。実は、米子市周辺エリアにあるビール醸造所はブームの先駆け的存在であり、その中でも「大山Gビール」の田村社長は「全国地ビール醸造者協議会」の会長も務めている。そこで、米子市周辺エリアの地ビールをイベントの柱に据えたという訳だ。

「鳥取は、食べ物が非常においしいが、PRが弱い側面があるんです。例えば、地ビール、地酒、大山ハムや、大山どりなどいずれも大変良質です。しかし、告知がうまくない。そして、地域の良品を、住民が分かっていない。こんな美味しいものなのに、価値を理解出来ていない人が非常に多いんですよ。だから、米子の地ビールや食がもっと注目されても良いよね、という想いから、大山ブランド会やこのイベントを立ち上げたんです」と森代表理事は語る。

こうして、2018年から始まった「地ビールフェスタin米子」。「規則性がないと集客は定着しない。年に一度や、半年に一度の開催では、『角盤町にこのタイミングで行けば、お祭りやってるよね』という認知獲得にはならない」との考えから、毎月月末金曜日に固定して定例開催を続けることにこだわり、真夏でも真冬でも、悪天候により中止したことは一度もない。

イベント会場内には、米子エリアの地ビールや地酒、地産品のおつまみなどの屋台があちこちに立ち並び、来場客がその場で買い求めて飲食を楽しめるブースを設置。地元テレビ局や、ミュージシャンらの「地域を盛り上げたい」という賛同・協力も獲得し、ステージイベントも企画した。ここへ来れば、地産の美味しい酒も食も、そして地元ミュージシャンらが発信するコンテンツも一度に楽しめる。地域内にそれぞれバラバラに点在して埋もれていた良質な「人」「モノ」「情報」を線で結んで、ここ角盤町から継続して情報発信・集客するという試みを地道に続けていった。

そのような努力の甲斐あって、毎月末の「地ビールフェスタ」の日には商店街のアーケード内や周辺エリアに人出と活気が次第に復活。開催月ごとに「ハロウィン」「クリスマス」などテーマを設けると、仮装姿の来場客も見られるようになった。夏には「サマーハロウィン」といった、来場客の間で自然発生した新たな賑わいや、米子市の真夏の一大風物詩「がいな祭り」とのコラボ企画で伝統の「がいな万灯」の姿も出現するなど、周辺エリアからの注目度も上がっている。

米子市伝統の祭り「がいな祭り」や、米子東高校の学生らとのコラボレーション企画、そしてハロウィン時期には仮装企画なども実施して賑わっている。

取組内容コロナ禍で開催内容を
アップデート

角盤町に新たな賑わいを着実に築いてきた「地ビールフェスタ」だったが、コロナ禍で一時はイベント開催自体を中断・規模縮小せざるを得なかった。

しかしそんな中でも、森代表理事をはじめ、実行委員会の東條さんらの挑戦はとまらなかった。今度は近隣の「皆生温泉旅館組合」「鳥取県酒造組合」と連携し、「地ビールフェスタ」で確立した「米子市周辺エリア内に点在する地域の良品を線で繋ぎ、広く情報発信」というスキームをさらに広域に適用するチャレンジを始めたのだ。

角盤町商店街は「地産品の飲食をフックに集客」、皆生温泉旅館組合は「温泉をフックに観光客の集客」、鳥取県酒造組合は「良質な地ビール・地酒の提供」というノウハウをそれぞれ持っている。これら3組合の持ち味を相互に活かし、新規サービスメニューの開発に乗り出した。例えば、「皆生温泉に宿泊で地酒3点ミニセットをプレゼント」「専門家による地酒講座」といった体験型メニューを考案。これらは非常に好評で、皆生温泉旅館街への送客や、鳥取県内の地酒の認知・リピート獲得にも貢献できたという。

そして、広域での連携・送客に着目するだけではなく、角盤町アーケード下での「地ビールフェスタ」そのものの開催内容もアップデートを試みた。

「来場客に安心・安全に飲食を楽しんでもらうためには、感染対策を万全に講じることがマストです」と語る東條さん。鳥取大学医学部の教授と何度も打ち合わせを重ねたうえで、会場づくりの段階から「会場面積は、以前の3倍確保」「飲食ブースの距離を十分に取るよう設計」といった新たな工夫を随所に凝らした。

またもう一つ、コロナ禍での新しい生活様式への対応として、会場からのライブ配信企画も投入した。会場と家飲みの人を、ビデオ通話ツール「Zoom」の画面越しに繋ぎ、オンラインで乾杯しようというものだ。

そして、感染対策の工夫だけではなく、SNS映えするお洒落な会場演出にも乗り出し、SNS経由で若者の間での認知獲得・口コミ波及なども狙った。例えば、透明のドーム型テントを屋外に設置し、「地ビールドーム」といったユニークな仕掛けを投入。来場客が思わず写真に撮りたくなり、その写真がSNSにアップされることでの口コミ拡散効果を狙ったものだ。これもまた、コロナ禍で非対面化が進み、オンラインでの認知獲得・集客施策が重要になっている昨今には必要な施策だと言える。

このような細やかな工夫の甲斐あって、地ビールフェスタの会場には引き続き人が集まっている。「若いカップルが、デートスポットとして楽しまれている姿も多いです」と語る東條さん。

また、森理事長は「仕事帰りに0次会、1次会のようにふらっと立ち寄るスポットとしても形成されつつあります。特に米子の経済人が一堂に集まり、ここへ来れば一度に挨拶や名刺交換ができる交流の場になっている点も成功ポイントだと言えます」と語る。

会場内には「地ビールドーム」の設置や焚き火の周りに集まって乾杯できる仕掛けなど、随所に目新しい工夫を凝らした。

将来の構想ノウハウをより広域に展開し、
地域全体で経済の底上げを目指す

これまでの取り組みのなかで培ってきた「広域に埋もれている良質な飲食文化を線で繋ぎ、情報発信・集客」というスキームは、角盤町だけでは終わらせない。

7月には、皆生温泉旅館街で「地ビールフェスタin米子」を出張開催予定で、旅館・ホテル街への宿泊客や、皆生温泉海水浴場への来場客に向けても魅力ある地域産品を訴求していく予定だ。

また、角盤町アーケード下での今後の開催については、お昼からの開催で新たな賑わいを創出し、ファミリー層獲得にもトライしたいという考えを描いているという。

角盤町を起点に、米子市周辺エリアが擁する地ビール・地酒の知名度を上げていき、それらを提供する飲食店・旅館・ホテルを徐々に増やしていく。そして、角盤町商店街の周辺エリアにまで送客し、将来的には酒類や地域産品の消費拡大に関して地域全体での底上げを狙っているという訳だ。

角盤町自身の継続発展だけではなく、広域での継続的な成長も視野に入れながら今後も取り組みを続けていく、という強い意思が伝わってきた。

会場内では米子市周辺エリアの地ビールだけではなく、地酒や、地産の食の屋台も楽しめる。
まとめコメント
  • 角盤町商店街振興組合だけでなく、近隣の皆生温泉旅館組合・鳥取県酒造組合と連携して企画。
    単体の商店街の中だけで完結せず、互いが持つノウハウを活かして広域での相互送客に成功した。
  • 温泉組合‧酒造組合との連携で互いの強みを活かし、新規で「皆生温泉に宿泊で地酒3点ミニセットをプレゼント」「専門家による地酒講座」といった「体験型メニュー」を開発。消費者に地域の魅力‧地域産品を深く理解してファンになってもらうことに繋がった。
  • 単発のイベントで終わらず、「7月以降も継続開催」「時間帯を変えて開催」「場所を変えて開催」と、企画がシリーズ化し来街者に継続して訴求できており、常連客化への動機づけになっている。
  • 周辺エリアの学生とのコラボや、「ハロウィン」など季節イベントに合わせた演出、SNSで話題が拡散する仕掛けを投入。若者、ファミリー層などへの新規ターゲットの拡大に成功した。
データ
事業者名 角盤町商店街振興組合
所在地 鳥取県米子市角盤町
商店街の類型 広域型商店街
組合員数 35店舗
主な業種構成 百貨店、衣類・ファッション、宝飾、理美容、飲食など
電話 0859-34-7013
 
米子市 人口:146,989人 世帯数:68,049世帯 出典:住民基本台帳 令和3年4月末
地ビールフェスタin米子